トニナspの育成

群生したトニナsp

Photo & Text by Tatsuo Miura

まず初めに、ここに表記するサンプルデータ及び、それに関してのTonina・species(トニナ属の一種。以下、トニナ.SP)の解説は、
マニアックなアクアリスト個人の経験的集約であって、生物学的、生化学的見地のもとで書いたものではないことをご留意いただきたい。
('95年春)



1995 11月号 das Aquarium誌 《枯れかけた葉のかたちが いかしていた 水草》
私たちの未来は『であい』という必然性を生み出す発端の 刺激で決定されている気がしてならない。 1995年、私がもしTonina・sp.という水草 に遭遇しなかったとしたらALで連載された『水草のメロ ディ』は幻想の縁で消滅していたであろうし、帰宅途中、 自転車から落車し、舌を縦割りにする怪我を負うなどとい うアクシデントにも会わずにすんだであろう。 しかし、どんなに痛い目にあおうとTonina・sp. との遭遇に感謝、感謝の今日である。 その年のドイツ専門誌『Das.Aquarium』の 11月号に掲載された私のTonina・sp.の記事 によって、育成データは公表された。その後、Toni na・sp.は現在のメジャーな地位を確保された水草と して販売されるようになった。 この事実に、『であい』の不可思議さを感じずにはいられ ない。何故なら、Tonina・sp.との、またそれ に関わる多くの人々との『であい』がなかったとしたら、 私の中では未だ、枯れかけた葉のかたちがいかしていた水 草として終わっていたかも知れないからである。




トニナSPの好む水質を把握し、維持できれば、その生長速度が以外に速いことに気づくだろう

*南米産Eriocaulaceae(ホシクサ科)、Tonina属の有茎草の一種でTonina Fluviatilisの仲間であろうと思わる。
日本にはマニアックなショップに極少量、日本の現地採集業者のルートで入荷をみた。
その育成の困難さによって、未だ流通経路には乗っておらず、高価で希少な水草に位置されている。近い将来、学者による正式名称が発表されることを望む。
日本では[Tonina SP] という名称で知られいる。この名称は、日本での流通名であり、spは種(species)の略と思われる。おそらく、アクアリウム先進国であるドイツ、オランダにおいてもこの草の紹介は初めてであろう。
Tonina Fluviatilisよりもはるかに美しく、頂芽の展開する房は誰しもを魅了してやまないであろう.
我がアクアスペースに [Tonina species]がやって来て一年(95年3月)が経過しようとしている。当時の60cm水槽の片隅に植えられた僅か一房のTonina species]の華麗な姿を偲びつつ、今では亜熱帯雨林の樹木の枝葉のように、八方に房をつけている[Tonina species ]の林の前で、トリミングバサミを手にして私は悩んでいる。毎日、悩み続けている。
水槽の前で、一晩で水面に到達した頂芽の房の生き生きとした輝きに圧倒されながら、「さあ、水上葉を出せよ。花を咲かせよ」と願いを込めても、[Tonina species]の房は蛇のようにとぐろを巻くだけで、私の期待は遮断されてしまう。

著名な方々の解説によれば育成困難な種のトップクラスに上げら れているが、確かにその「成長リズム」は他種とは一線を引ける程、不規則ではあるが、我がファームではHygrophila polysperma を育てるよりも、[Tonina species]を立ち上げることに無神経になっている。そう、「立ち上げる」ことをクリアーさえすれば、[Tonina species]の不規則な「成長リズム」を十分に楽しむことが出来るのである。
成長は決して遅くはなく、他の有茎種のように定期的なのトリミングを怠ると、レイアウトを損ねてしまい、水面に浮く大きな房はHydrocotyie leucocephalaの葉のように光を独占して、下部の草を枯らしてしまう。
必然的に我がファームのトニナSP水槽の下部は、陰性植物以外植 えられない状況と化している。事実、その様になっている。レイアウト当初はGlossostigma elatinoides 等で前景を作るのだが、一ヵ月もすると陽性種は姿を消し、例えばCryptocoryne等のみの下部景となっている。
あまりに美しく、華麗な草であるが故に、前書きが長くなってしまったが、私の日々の[Tonina species]のメンテナンスを通して、育成データを紹介して行きたいと思う。

トニナSP





Sample Data 2PH=水素イオン濃度
KH=炭酸塩硬度
GH=総硬度
育成状態 水槽/水量 伝導率 PH KH GH 光量 CO濃度
× A 162L 280μS 6.6 6°dH 9°dH 120W 50mg/L
B 105L 210μS 6.2 0<1°dH 4°dH 70W 20mg/L
C  65L 220μS 5.8 0<1°dH 5°dH 80W 50mg/L
D  10L 280μS 5.8 0<1°dH 5°dH 20W 50mg/L
× E  10L 320μS 6.8 2°dH 5°dH 8W 12mg/L
F  20L 220μS 5.8 0<1°dH 4°dH 20W 50mg/L
G  15L 250μS 6.2 0<1°dH 5°dH 16W 20mg/L
H  10L 300μS 6.5 0<1°dH 4°dH 8W 12mg/L
I  80L 200μS 6.2 0<1°dH 5°dH 80W 20mg/L


Sample Data 2 を御覧頂きたい。○×の印は [Tonina species]の育成状態を示したもので、各水槽の水質データと照らし合わせれば、[Tonina species]の育つ水質が自ずとお分かり頂けると思う。
×のA、E水槽の炭酸塩硬度KHを注目すると、[Tonina species]を「立ち上げる」には炭酸塩硬度KHの存在が大きく関与していことに気付く。
次にPH値が6.5以下が適性であることに確信をもてる。更に、伝導率、総硬度GHに関してはさほどの注意は払わなくとも良く、光量、二酸化炭素CO量も通常の水草水槽程度の設定で大丈夫であることが分かる。特に、H水槽はCOの強制添加は全くしておらず、摩訶不思議のデータではあるが、これは2日に一度、2分の1の換水による賜物であろうと思われる。
但し、各水槽A〜Iの○印の[Tonina species]の一房一房を比較してみると、房の状態、特に葉のグリーン系の差異に驚かずにはいられない。光量、二酸化炭素CO量の十分な群に関しては、そのグリーンが濃く頂芽の房も大きく、反してCO量の少ない群では、房は小さく黄色みをおびた葉となっている。肥料の要求度はかなり強く、底肥が不足した状態で放置していると、子株を見せてくれるどころか頂芽が縮れて苔蒸してしまう群が大半である。

トニナSPの群生の中で子育てをするアピスト

トニナSP・レースプラント

また、多くの有茎種の場合、頂芽が水面まで到達すると、下部の光のあたらない葉は枯れて茎のみとなっている姿を良く見掛けるが、「立ち上げ」に成功した[Tonina species]の林は下部までグリーン一色で、写真のように二列目以降の水景を見ることは困難な程青々として、枯れ落ちることはまず無い。これは生き生きとした育ち行く頂芽に、十分な活性環境があることに起因しているように思う。下部まで育ち行く伝達能力が、頂芽には備わっている立証であろう。

トニナSP












自然の大地に生えるすべての植物の成育は、大地、つまり土壌を含めた環境要因により決定されている。この筆記は、以上を根底としたレポートあると同時に(中途半端で不必要な情報部分も多いとは思うが)、遠い日本からの小さな報告であると受け止めて頂ければ幸である。
そして、[Tonina species]の林の合間から、おなかを一杯にしたApistogramma agassizii(Alenquer)の稚魚たちが、親魚のつくる波動を聞き落とさないように、じっと私を見つめている。見つめられている私が、「君も一緒にToninaの林で泳ごうよ。」と、言われつつ意思を想像してしまう程、今、[Tonina species]の林は豊かである。

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